D.C.II~ダ・カーポII~
深々と桜が舞っていた。
一年中絶えることなく、
その島では薄桃色の桜の花が咲き誇っていた。
――季節は冬。
地面にはうっすらと霜が降り、空からは純白の結晶が舞い落ちる。
吐き出す息も白く色づき、布団から抜け出すのが憂鬱になる季節。
だと言うのに、
「相変わらず、季節感のない景色だよな」
通学路の桜並木を歩きながら、少年――義之はそう呟いた。
「まぁ、それが初音島名物『枯れない桜』だしね」
「や、今更そんなことをしみじみ言われても」
少し前を歩くふたりの少女が振り返る。
ひとりは楽しそうに笑顔で、
もうひとりは少しかったるそうに。
それも見慣れた景色。
少年は春のように咲き誇る桜の木々を見上げて、白い息を吐き出した。
間近に迫るクリスマスパーティー。
そして、年が明けたら付属最後の学園生活がはじまる。
出会いと別れ。喜びと悲しみ。
そこにどんな日常が待っているのかはわからない。
でも――、
何かが変わりそうな気がする。
ゆらり、ゆらりと舞い落ちる桜の花びらを眺めながら、
――少年は少し先の春を夢見た。
想玩 | 玩过 | 在玩 | 搁置 | 抛弃 |
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