赫炎のインガノック -What a beautiful people-
10年前。《復活》と呼ばれる原因不明の災厄により、全てが捻じ曲げられ、異形と化した都市『インガノック』。かつてこの世の理想郷たる完全環境都市(アーコロジー)を目指したそこは、今では外界と隔絶され、都市存続を唯一至上の目的とする非情な法律と、現出したお伽噺の住人、神話の怪物達が跋扈し、奇病業病が蔓延する地獄の様相を呈していた。
そんな中。人々に変人と罵られながらも、弱者撲滅を謳う都市法に抗い、手を差し伸べ続ける巡回医師ギー。彼は《復活》後の都市で独自に生み出された魔法にも似た超技術『現象数式(クラック)』を操る、『違法数式医(イリーガル=クラッキング・ドク)』だった。
溢れる“死”に感情を凍てつかせ、己の身を省みず手を差し伸べても、零れ落ちていく命達。もはや使命感か義務感か、己を衝き動かすものの正体さえ掴み切れはしない。そしてまた、ギーも自身に芽生え始めた狂気を自覚していた。 『こんにちは。ギー』
今日も幻の道化師は囁く。ギーの視界の端で踊り続ける、この十年で芽生えた狂気。
…しかし。その日は何かが違っていた。
『こんにちは。ギー。雑踏をよく見てご覧』
狂気が造り出した幻に過ぎない筈の、道化師の導き。ギーは自嘲しながらも、気付けば声に従っていた。
――そしてギーは出会ったのだ。彼の、そして都市の命運をも左右する二人に。
一人は少女。この異形都市に在りながら穢れを知らず、人が忘れた“笑顔”を絶やさぬ不思議な少女。
一人は影の巨人。お伽噺の住人にして、都市に残された最後の希望と謳われる“鋼の人形”。
ギーが得たものとは一体? 《奇械》とは何か? 都市が忘れていた真実とは?
閉ざされていた物語は、少しずつ動き始める……。
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